2014年7月14日月曜日

[1分モノ]第六回BRICSサミット開催(7月15日から17日まで)

ブラジルにて第六回BRICSサミットが7月15日(火)〜17日(木)にかけて開催されます。

主要な議題は「BRICS開発銀行」を正式に発足させること。
BRICS開発銀行は、世界銀行および国際通貨基金(IMF)を代替するものとして組織されようとしています。

IMFは債務返済に苦しむ成長途上国に資金援助を行う組織ですが、援助の際の条件が苛烈であることで有名でした。
例えば2011年のギリシャ債務問題では、
  • 月間1200ユーロ(約12万5000円)超の年金を20%削減
  • 55歳未満の年金受給者には1000ユーロを超える部分について支給額を40%削減
  • 約3万人の国家公務員の賃金を引下げ
などが条件となりました。

これに対しBRICS開発銀行は、
  • BRICSにおける社会インフラ整備のプロジェクトに対する資金提供
  • BRICS諸国に財政危機が生じた場合の資金提供
を行うことを目的としています。

この流れは、BRICS諸国のドル支配下からの離脱を加速させます。

2014年6月9日月曜日

[5-10分モノ]20世紀型体制の黄昏、21世紀型体制の産声

アメリカの強さを支える根幹にあった「ドルの基軸通貨性」が弱まってきたことに起因して、ロシアや中国、インドなどBRICSを中心とする勢力が力をつけつつあります。

「アメリカ経済史:アメリカが世界一"だった"理由を分かりやすく解説」(2014.2.18)
http://kokusai-news.blogspot.jp/2014/01/blog-post_25.html

そのことにアメリカは脅威を感じ、ロシアに対してはウクライナ危機を、中国に対しては周辺諸国との領土問題に関連する圧力を、インドに対してはルピーに対する信頼性を引き下げる圧力を…と様々な覇権を行使してきました。
本ブログでは特にウクライナ危機に焦点を当てて投稿をしてきました。

「ウクライナ情勢:ドルの基軸通貨性、エネルギー産業、軍事勢力との関係」(2014.3.12)
http://kokusai-news.blogspot.jp/2014/03/blog-post.html
「仮説:ウクライナ危機は、ロシアのアメリカ覇権からの離脱を促進させる?」(2014.4.20)
http://kokusai-news.blogspot.jp/2014/04/blog-post.html
「予想的中:ウクライナ危機とロシアのアメリカ覇権からの離脱の関係」(2014.5.14)
http://kokusai-news.blogspot.jp/2014/05/update_14.html
「想定通り:ロシアと中国の天然ガス契約」(2014.5.22)
http://kokusai-news.blogspot.jp/2014/05/5-10.html

今回、5月22日の投稿で紹介した「ロシア・中国間貿易におけるドル決済からロシアルーブル・中国人民元決済への置換え」に引き続く出来事があったのでお知らせします。
それは、ロシア第一の天然ガス企業であるGazprom社が、天然ガスを輸出する際の決済通貨をユーロ(euro)にする同意書に調印した、というものです。
英語の記事なので翻訳を掲載します。

壮大な地政学的プロジェクト:ロシアのGazprom社がドル決済放棄の同意書にサイン(2014.6.7 Global Research(カナダ))
Grand Geopolitical Project: Russia’s Gazprom signs Agreement to Abandon the Dollar
http://www.globalresearch.ca/grand-geopolitical-project-russias-gazprom-signs-agreement-to-abandon-the-dollar/5386045

“It’s only the tip of the iceberg. A grand geopolitical project is beginning to materialize…”
「これは氷山の一角にすぎない。壮大な地政学的なプロジェクトが実現化され始めた。」

On June 6 2014, the official Russian news agency Itar Tass announced what many were expecting since at least the beginning of the Ukrainian crisis: Russian main energy company, Gazprom Neft has finally “signed agreements with its consumers” to switch from Dollars to Euros (as transition to the ruble) “for payments under contracts”.
2014年6月6日、ロシアの公的な報道機関であるItar Tass社が、少なくともウクライナ危機の発生時より多くの人が予想(期待)していたことを発表しました。「ロシアの主要エネルギー企業であるGazprom Neft社が、(貿易決済通貨を)ドルからユーロに切り替える『同意書を顧客とともに調印した』」と。

The announcement that the agreement has been actually signed and not just discussed was made by Gazprom’s Chief Executive Officer, Alexander Dyukov.
ただの議論だけでなく、実際に同意書の調印まで至った旨を発表したのは、Gazprom社CEOのアレクサンダー・デュコフ(Alexander Dyukov)氏です。

Despite the pressures from Wall Street and its military, propaganda and political apparatus, 9 out of 10 consumers of Gazprom’s oil and gas agreed to pay in Euros.
アメリカのウォールストリート(金融勢力)や軍事勢力、(CNN,Foxnews,ABC,CBC,NY Times社などからの)プロパガンダや(NGOなどの)政治勢力などからの様々な圧力にもかかわらず、Gazprom社の石油および天然ガスの消費者のうち、10のうち9の消費者(*)がユーロ決済について同意しました。

*:訳注:国なのか企業なのかを恐らく意図的に曖昧にしています。理由はアメリカからの攻撃を避けるためでしょう。

Of course, the big watershed was the Gazprom unprecedented 30-years $400Bl natural gas supply to China signed in Shanghai last May 21 in the presence of President Putin and President Xi Jinping in the middle of the Anglo-american sponsored violent destabilization of Ukraine.
当然のことながら、大きな分水嶺だったのは2014年5月21日における、プーチン大統領と中国の習近平国家主席の眼前で交わされた、今後30年で400億ドル(約40兆円)分の天然ガスを供給するという前代未聞の調印でしょう。これはアングロアメリカが支援した暴力的なウクライナの不安定化の過程で行われました。

In fact it is improper to talk a dollar denominated $400Bl, because this “biggest deal” will not be using dollars but the Renminbi (or Yuan) and the Russian Ruble. It links China and Russia economically and strategically for three decades, de facto (and maybe later also de jure) creating an unshakable symbiotic alliance that necessarily will involve the military aspect.
ここで400億ドル分の、と表現するのは不適切ですね。なぜなら、この最大の取引がドルを用いず人民元とルーブルを使うからです。この契約は事実上(後に明文化もされると思いますが)、中国とロシアの今後30年間の、軍事面での協力を含む経済的・戦略的な架け橋となります。

The Russia-China agreement is a clear defeat of the obsessive geopolitical attempts by Wall Street to keep the two country in a situation of competition or, ideally, war-like confrontation.

ロシアと中国間の合意は、ウォールストリートがこれまで行ってきた、中露を競争状態−彼らの目指すところでは−戦争に近い状態に置きとどめるという抑圧策を明確に打ち破りました。


It changes the structure of alliances. It strikes at the historical foundations of British colonial geopolitics (Divide and Rule).

この合意は各国間の協力関係を変化させるでしょう。この合意はイギリスの植民政策(分割と統治(訳注:大国内で対立を生じさせ分割し、漁夫の利的に統治する形態))の歴史的な基盤を打ち破るでしょう。


Under escalating pressures and threats to their national security, Russia and China overcame brilliantly historical, ideological, cultural differences which had previously been been by the colonial powers (and their financial heirs in Wall Street and the London’s city) for their “Divide & Conquer” strategy.
ロシアと中国は、海外勢からの圧力が強まり、国家の安全が脅かされるに至ったため、喜ばしきことに、ロシア・中国双方の歴史、国家の大義、文化といった様々な違いを乗り越えました。

従来、これらの違い(溝)は英米の植民地支配勢力(および彼らの金融兵器であるウォールストリートやロンドンのシティ)につけこまれ、「分割と統治」戦略に利用されてきました。


Furthermore, to the horror of London and Washington, China and Russia concluded an agreement with India (the BRICS!) breaking the other holy tenet of British colonial geopolitics: The secret to controlling Asia, and thus Eurasia has always been to instigate a perennial rivalry between India, China, and Russia.
さらに、ロンドンとワシントンにとって脅威なのは、中国とロシアはインドとも協調関係を結んだことです。

これはもう1つのイギリスの植民政策である、「アジアをコントロールし、ひいてはユーラシアを操る秘訣は、インド・中国・ロシアを永久的に対立関係に置くよう煽動することである」というものも打ち壊します。


This was the formula for the 19th century “Great Game”. This was why Obama was selected to succeed George W Bush.

これは19世紀の「グレート・ゲーム」を制する公式でした。そしれこれがオバマ大統領がジョージ・W・ブッシュ大統領に引き続いて選出された理由でした。


The then vice Presidential candidate Joseph Biden announced it very openly on Aug 27 2008 at the Democratic Convention in Denver, explaining why the Obama-Biden duo had been chosen to take over the White House.
当時の副大統領候補であったジョセフ・バイデン氏は、2008年8月27日にデンバーで開かれた民主党大会において、オバマーバイデンコンビがホワイトハウスを(ブッシュ政権から)奪い取る理由を説明するなかで、このことを明確に述べています。

The greatest mistake of the Bush administration and the Republicans, he said, was not their atrocious unchained warmongering, but their failure “to face the biggest forces shaping this century. The emergence of Russia, China and India’s great powers”.
ブッシュ政権と共和党が犯した最大の過ちは、(バイデン氏が言うには)彼らの極悪な、とどまることを知らない戦争志向ではなく、21世紀を形作る新勢力ーロシア、中国、インドがなす強大な勢力の勃興ーと向き合ってこなかったことにある。

Zbigniew Brzezinski’s protégé Barack Obama was to defeat this “threat”. Obviously they failed! But this explains the dogged, irrational, King Canute-style self-destructive arrogance that has taken over the present Administration.

ズビグニュー・ブレジンスキー(訳注:アメリカ国家戦略の策定に大きな影響力を持つ人物。ヘンリー・キッシンジャーと並び称される。)の子分であるバラク・オバマはこの脅威を打ち破るだろう、とバイデン氏は述べていました。しかし、明らかにオバマーバイデンコンビは失敗しました!

またこのことは、頑固で、不合理的で、クヌーズ王的な自滅的な傲慢さがオバマ政権を支配していることも示しています。

The significance of these developments should be emphasized in relation to both the real economy and the underlying financial structures.
これらの出来事の重要性は実体経済と経済構造の2つの側面から強調されるべきものです。

These developments in Eurasia are likely to have weaken on “the chains that have tied the European Union to Wall Street and the City of London”.
今回の一連の出来事は、EUとアメリカのウォールストリート、EUとイギリスのシティをそれぞれ結びつけていた鎖を弱めたことでしょう。

The end of the dollar payment system (Aka Petro-dollar) does not concern the currency of the United States or the United States as such. In fact overcoming this system could mean the restoration of a rational and prosperous economy in the United States itself.
ドル決済の枠組み(いわゆるPetro-dollar、石油とドルの循環の仕組み)の終焉は、アメリカ合衆国の通貨やアメリカ合衆国そのものにとって悪いものではありません。むしろ、この枠組みを乗り越えることは、アメリカ合衆国自身の経済を裕福で合理的なものに再構築することを意味します。

What is known as “dollar system” has been just an instrument of feudal financial centers to loot the economy of the world. These centers are ready to do anything to save their right to loot. It is well known that whoever tried, until now, to create an alternative to the dollar system, met a ferocious reaction.

ドル・システムとして知られるこの枠組みは、世界経済全体から収奪を行う金融センターが用いる道具となっていました。これらの金融センターには、収奪を行う権利を保持するためにどんなことでも行う準備があります。これは広く知られていることですが、これまでは、ドル・システムに代わる仕組みを創り上げようとするものは誰でも凶暴な仕打ちを受けてきました。


It is fitting to remember in this moment of great hope, the words of one of the very few great living strategists, Gen. Leonid Ivashov. On June 15 2011, reflecting on the savage destruction of Libya, the general who is an unofficial spokesman of the Russian armed forces and has been Russia’s representative in NATO, wrote
生存する卓越した戦略家の一人、レオニド・イワショフ(Leonid Ivashov)将軍の言葉を思い返してみることは、今日の良き日にとって相応しいことと思われます。2011年6月15日、リビアに対する獰猛な破壊行為を受け、ロシア軍の非公式なスポークスマンであり、NATOにおけるロシア代表と務めていた将軍は次のように書きました。

“BRICS and the Mission of Reconfiguring the World.”
「BRICSと世界再構築のミッションについて」

Whoever challenges the dollar hegemony, explained Ivashov, becomes a target.
ドル覇権(dollar hegemony)に挑戦するものは誰でもターゲットになる、とイワショフ将軍は説明しています。

He gave precise examples: Iraq, Libya, Iran:
“the countries which defied dollar dominance invariably came under heavy pressure and in a number of cases – under devastating attacks.” But the “the financial empires built by Rothschilds and Rockefellers are powerless against the five largest civilizations represented by the BRICS.”

彼はその正確な具体例として、イラク・リビア・イランを挙げています。
「ドルの支配に抵抗しようとした国々は、例外なく強烈な圧力下に置かれ、多くの場合には破壊的な攻撃を受けてきました。」しかし、「ロスチャイルドとロックフェラーによって構築された金融帝国は、BRICSに代表される5大文明に対しては無力です。」


Thus, Ivashov advocated a coordinated strategy by countries representing half of the world population to win their independence using their own currency.
すなわち、イワショフ氏は世界の人口の半分を擁する国々が、彼ら自身の通貨を用いることで独立を勝ち取る戦略を唱えているわけです。

“The shift to national currencies in the financial transactions between the BRICS countries should guarantee an unprecedented level of their independence…”
「BRICS諸国間における貿易決済を(ドルから)自国通貨に切り替えることは、これまでにないレベルにまで各国の独立を保証するでしょう。」

Since the collapse of the USSR, the countries which defied dollar dominance invariably came under heavy pressure and in a number of cases – under devastating attacks. Saddam Hussein –who banned dollar circulation in all spheres of Iraq’s economy including oil trade– was displaced and executed and his country was left in ruins.

ソビエト連邦の崩壊以降、ドルの支配に抗うものは例外なく強烈な圧力下に置かれ、多くの場合には破壊的な攻撃を受けてきました。サダム・フセイン大統領は、石油貿易を含むイラク内の全ての局面においてドルの流通を禁止しましたが、権力の座から追放され、刑罰を受け、イラクは壊滅的な状態に追いやられました。


M. Gaddafi started switching Libya’s oil and gas business to gold-backed Arab currencies and air raids against the country followed almost immediately… Tehran had to put its plan to stay dollar-free on hold to avoid falling victim to aggression.

リビアのカダフィ氏が、リビアの石油と天然ガスビジネスを金(ゴールド)と兌換可能なアラブ通貨での決済へと切り替え始めようとするやいなや、リビアは空爆を受けたので、イランは同じような攻撃の犠牲者になることを避けるため、ドルから自由になる計画の実行を延期せざるを得ませんでした。


Still, even enjoying unlimited US support, the financial empires built by the Rothschilds and Rockefellers are powerless against the five largest civilizations represented by countries accounting for nearly half of the world’s population. BRICS is clearly immune to forceful pressure, its member countries do not appear vulnerable to color revolutions, and the strategy of provoking and exporting financial crises may easily backfire.
しかし、アメリカ合衆国の無制限の支援を受けているにもかかわらず、ロスチャイルドとロックフェラーによって構築された金融帝国は、世界全体の約半数の人口を擁する国々に代表される5大文明に対しては無力です。BRICSは明らかに強力な圧力に対して抵抗力があり、(訳注:ウクライナのオレンジ革命などの)カラー革命に対しても脆弱さを見せていません。また、挑発を行う戦略や、経済危機を引き起こす戦略に対しても免疫を持っています。

In contrast to the US and the EU, BRICS countries altogether own natural resources sufficient not only to keep their economies afloat in the settings of contracting availability of hydrocarbon fuels, food, potable water, and electric power but also to sustain vigorous economic growth.
アメリカやEUと違って、BRICS諸国が持つ化石燃料、食料、飲用水、電力などの天然資源は、自国経済をなんとか維持させる程度のものではなく、強健な成長を続けることを可能とするほど十分なものです。

The shift to national currencies in the financial transactions between the BRICS countries should guarantee an unprecedented level of their independence from the US and from the West in general, but even that is only the tip of the iceberg. A grand geopolitical project is beginning to materialize
BRICS諸国間における貿易決済を(ドルから)自国通貨に切り替えることは、各国のアメリカや西欧からの独立をこれまでにないレベルにまで保証するでしょう。しかし、これはほんの氷山の一角にすぎません。壮大な地政学的なプロジェクトが実現化され始めたのです。

Now it’s the moment for Europe to decide the big step. The Ukrainian crisis is in reality a Battle for Europe.

今こそ、ヨーロッパが大きな一歩を踏み出すときです。ウクライナ危機は実際のところ、ヨーロッパにとっての試練なのです。


The elites of Continental Europe — The Germany of Alfred Herrausen, the France of Charles De Gaulle, the Italy of Enrico Mattei and Aldo Moro, the Europe that tried to road of sovereignty and independence … have been until now terrorized and threatened exactly in the terms explained by Gen Ivashov.
ヨーロッパ大陸のエリート達、例えば、ドイツのアルフレッド・ヘラウセン(Alfred Herrausen)、フランスのチャールズ・ド・ゴール、イタリアのエンリコ・マッテイにアルド・モーロらによって、主権の確保と独立の道を歩んできたヨーロッパは、これまでのところイワショフ将軍の説明するところと違いなく、恐喝や恫喝を受けてきています。

Now the Battle for Europe is raging. We will look in a coming article at the great European forces, the silent partners, still traumatized and scared, who are looking with trepidation and painful memories of the past defeats at the firm stand of Russia.
今のヨーロッパが置かれた戦局は非常に厳しい状況にあります。私たちは、静かなパートナーであり、過去ロシアの頑強な抵抗にあって打ち負かされた記憶を持っていて、トラウマで恐れおののいているヨーロッパ軍が次にどのような動きに出てくるか、様子を見ることとしましょう。


====訳終わり====
いよいよ、欧州もEurolandとして1つの国家になるのでしょうか。今後の動静が楽しみです。ただどうか、戦争が起こりませんように。最近、アメリカが核兵器を使用する可能性について言及した記事がやたらと目に付くので心配です。第一次世界大戦も、かつての帝国であるイギリス帝国が崩壊するときに起こっています。アメリカが大人しく覇権の座をBRICS+EUに譲ってくれればよいのですが…

2014年5月22日木曜日

[5-10分モノ]想定通り:ロシアと中国の天然ガス契約

2014年4月20日の投稿の中の「<エネルギー資源貿易の枠組みについて>」で触れた通り、2014年5月21日にロシアと中国が天然ガスに関する契約をまとめました。
詳細は日本語の記事に譲ります。

ロシアのガスプロム、中国への天然ガス供給契約に調印(2014年5月22日)

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0E10SH20140521?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0

さて、4月20日の投稿でもう1点触れていたことがあり、こちらも重要です。


(ロシアと中国間のエネルギー貿易においては)ドルを使った決済は行われず、ロシア・ルーブルもしくは中国人民元を利用した決済が行われる可能性があります。
これは、ただでさえ弱りつつある、アメリカ覇権の根幹にあるドルの基軸通貨性を"さらに"弱めることにつながります。


というものです。
こちらについてはあまり報道がなされていないようですが、その布石と思われる動向について、RT(Russia Today)が2014年5月20日に報じた記事を見てみましょう。

Russia’s VTB and Bank of China agree on domestic currency settlements
http://rt.com/business/160124-vtb-bank-china-currencies/

VTB, Russia’s second biggest lender, has signed a deal with Bank of China, which includes an agreement to pay each other in domestic currencies.

"Under the agreement, the banks plan to develop their partnership in a number of areas, including cooperation on ruble and renminbi settlements, investment banking, inter-bank lending, trade finance and capital-markets transactions”

(訳)VTB、ロシア第二位の規模の融資機構は、(訳注:同じく中国第2の商業銀行である)中国銀行と、相互の通貨で決済を行うことに合意することを含む取引にサインしました。
「今回の合意の下では、VTBと中国銀行は多くの領域でパートナーシップを発展させる計画でいます。協力する領域には、ロシア・ルーブルと中国・人民元の決済通貨化、投資銀行業務、銀行間融資、

貿易決済(訳注:今回の天然ガス契約を指しているのでしょう)

、そして資本市場での売買などが含まれています。」


C:予測通り、ウクライナの事件でロシアと欧州の関係が悪くなったことで、ロシアは中国と手を結びやすくなり、結果としてドルの基軸通貨性を弱めることになりましたね。


A:そうですね。
次のビックイベントは2014年5月25日(日)のウクライナ大統領選挙です。
「Update:ウクライナ新政権の実態」で触れたように、現在のウクライナは暴力的な政党が優位な立場にあります。
大統領選挙においても何らかの暴力的な圧力が加わる可能性があります。
また、結果についてレビューしたいと思います。

*ウクライナ新政権の実態を報じた動画を再掲します。流血や死体が出てくるシーンがあります。食事前後などの視聴は避けた方が良いかもしれません。

2014年5月16日金曜日

オバマ大統領夫人の#Bring Back Our Girlsキャンペーンと周囲の反応

2014年4月16日、アフリカのナイジェリアで武装イスラム勢力"Boko Haram"が、スクールバスに乗った少女約200人を誘拐しました。


それからおよそ1ヶ月経った今日でも事態は完全に鎮静化していません。

(以下は殆どがRT(Russia Today)の記事からの抜粋です。)

この情勢を受けて、アメリカ大統領婦人であるミシェル・オバマは、2014年5月10日の母の日に"#Bring Back Our Girls"キャンペーンを展開しました。

「ファーストレディ(大統領夫人)であると同時に、2人の若い娘の母親として…(略)…誘拐された少女たち全員が無事解放されるよう祈りましょう」といったことを述べました。

これを受けてTwitterが盛り上がりました。上の写真下部にある"likes(いいね)"の数などからもそれが伺えます。


一方で、この表明が偽善的であると、批判的な見方をするTwitterユーザもいました。
彼らはミシェルを真似て写真を撮ったり、ミシェルの持つ、紙に書かれた言葉を写真編集ソフトで上書きすることで皮肉りました。

「#あなたの旦那は、Boko Haramがこれまでに殺害した人数全て足し合わせた以上のムスリムの少女たちを殺した。#死人は取り返せない。」

「私の主人はDrone(ドローン)でたくさんの子供を殺しています。」

「#Droneを使った殺戮をやめよう」

「#オバマに殺されたムスリムの少女たちはどうする?」

「私の主人は、Boko Haramがこれまでに殺害した以上の若い女性を殺害してきました。」


「誰も、私の主人のDrone爆撃によって殺された子供達を取り戻すことはできません。」

(以上がRT記事からの抜粋)

Q:何度も出てきたDroneって何??

A:無人航空機です。遠隔操縦で爆撃できる機能を備えたものがあります。
以下の動画で紹介しているDroneはミサイル4本、爆弾2つを搭載できるそうです。








Droneは主にパキスタン、イエメンに出撃しています。
テロリストを殺害するための爆撃ですが、精度が高くないために誤って一般市民を殺害することもあるようです。
先に紹介したTwitterでは、このDrone爆撃で巻き添えを喰った少女たちを返せ、と言っているわけです。

Source:http://brianbrownewalker.com/wp-content/uploads/2012/05/war-dead-child-obama-Drone-attack-victims1.jpg

C:これではどちらがテロリストか分かったものじゃないね。

A:その通りだと思います。

少し旧いですがDrone爆撃に関する簡単な統計資料を紹介します。
2010年をピークにパキスタンへの出撃回数は減少しているようです。

Source:http://youviewed.com/tag/pakistan/

返り討ちを恐れることなく完全に一方的に爆撃を行える兵器。科学が悪用されると恐ろしく感じます。

「科学の悪用」の他の例として、NSA(National Security Agency)の取組みについても近いうちにご紹介したいと思います。

2014年5月14日水曜日

予想的中:ウクライナ危機とロシアのアメリカ覇権からの離脱の関係

2014年4月20日に投稿した、「仮説:ウクライナ危機は、ロシアのアメリカ覇権からの離脱を促進させる?」の予想が当たったことを示す記事が出たので急ぎ共有します。(未読の方は4月20日の投稿も是非お読みください。)


英語の記事なので翻訳しました。

Source:http://voiceofrussia.com/2014_05_13/Russia-strives-to-exclude-the-dollar-from-energy-trading-5138/

=====以下引用と翻訳=====
Russia strives to exclude the dollar from energy trading
ロシアはエネルギー貿易からドルを排除しようと努力

Russian press reports that the country's Ministry of Finance is ready to greenlight a plan to radically increase the role of the Russian ruble in export operations while reducing the share of dollar-denominated transactions. ロシアプレスは、ロシア財務省は輸出業務(決済?)において自国通貨のロシアルーブルの役割を急速に増大させ、一方でドル使用の割合を減らす意向であることを報じた。

Governmental sources believe that the Russian banking sector is "ready to handle the increased number of ruble-denominated transactions".
複数の政府関係筋は、ロシア銀行業界が「ルーブルを主に利用する決済の増加をさばく準備ができている」と考えている。

According to the Prime news agency, on April 24th the government organized a special meeting dedicated to finding a solution for getting rid of the US dollar in Russian export operations.
プライムニュースエージェンシーによると、2014年4月24日、ロシア政府は輸出におけるUSドルの使用を削減させる方法を議論するための特別会議を開いた。

Top level experts from the energy sector, banks and governmental agencies were summoned and a number of measures were proposed as a response for American sanctions against Russia.
エネルギー分野、銀行、政府機関からトップレベルの専門家が召集され、そこではアメリカのロシアに対する経済制裁への対応としていくつかの提案がなされた。

The"de-dollarization meeting” was chaired by First Deputy Prime Minister of the Russian Federation Igor Shuvalov, proving that Moscow is very serious in its intention to stop using the dollar.
このロシア第一副首相のIgor Shuvalov氏が議長を務める「de-dollarization(ドルからの離脱)会議」は、ロシア政府がドルの使用を停止することに非常に真剣であることを示している。

A subsequent meeting was chaired by Deputy Finance Minister Alexey Moiseev who later told the Rossia 24 channel that"the amount of ruble-denominated contracts will be increased”, adding that none of the polled experts and bank representatives found any problems with the government's plan to increase the share of ruble payments.
その後の、ロシア財務相Alexey Moiseevが議長を務める会議において、財務相は「ルーブル使用の契約が増加する見込み」とロシア24チャネルに対して述べた。さらに、(先の会議に参加した)専門家や銀行代表者達は、「ルーブル使用を増加させる政府の計画には何の問題もない」との見解だった、と付け加えた。

It is interesting that in his interview, Moiseev mentioned a legal mechanism that can be described as"currency switch executive order”, telling that the government has the legal power to force Russian companies to trade a percentage of certain goods in rubles.
財務相はインタビューにおいて、「通貨変更執行令」なる興味深い法的枠組みについて触れた。本枠組みを使うと政府はロシア企業に対し、特定商品の貿易におけるロシアルーブルの使用割合を一定程度までとするよう強制することができるという。

Referring to the case when this level may be set to 100%, the Russian official said that "it's an extreme option and it is hard for me to tell right now how the government will use these powers".
その割合を100%とする可能性について触れた際、ロシア財務相は「それは究極の選択肢。政府が現時点においてこの権力をどのように行使するか述べることは難しい」と述べた。

Of course, the success of Moscow's campaign to switch its trading to rubles or other regional currencies will depend on the willingness of its trading partners to get rid of the dollar.
当然のことながら、今回のロシア政府の、貿易におけるルーブルもしくは他の地域通貨へ切り替える取組みが成功するか否かは、貿易相手国が同様にドル使用を排除する意志を持っているかにかかっている。

Sources cited by Politonline.ru mentioned two countries who would be willing to support Russia: Iran and China.
Politonline.ruによって引用された複数の情報筋によると、2つの国がロシアを支持する意向とのこと。2つの国とはイランと中国。

Given that Vladimir Putin will visit Beijing on May 20, it can be speculated that the gas and oil contracts that are going to be signed between Russia and China will be denominated in rubles and yuan, not dollars.
(訳者註:2014年4月20日の投稿の「<エネルギー資源貿易の枠組みについて>」で予測した通りのことが次に述べられています。)

プーチン大統領は2014年5月20日(火)に北京を訪問する予定。そこでは天然ガスと石油に関する契約が締結される見通しだが、その貿易決済はルーブルと人民元で行われ、ドルは使用されないと推測される。

=====引用、翻訳終わり=====

4月20日の投稿の予測、見事に当たりましたね。ドルの基軸通貨性を軸に経済の動きを追うことで、少し先の未来について予想することができるようになる、ということを実感しました。

それにしてもこの5月は大きな動きのある月ですね。
インドでは5月16日(金)に反米色の強いモディ首相が当選しそうで、もしそうなったら中国・イランの流れにインドも加わるかもしれませんし。
極右勢力がはびこるウクライナでは5月25日(日)に大統領選挙がありますね。まともな政権が樹立されると極右勢力は困るでしょうから、ここでも何か一波乱ありそうです。

この約100年に一度の大きな歴史的なうねりに飲み込まれないよう日々情報を取って行きたいですね。

(投稿終わり)


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